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日本は環太平洋に広がる地震帯の一環に位置し、地震が発生することを受け止めなくてはならない環境にある。筆者は、次世代を担う子供たちには、恐怖感のみをあおるのではなく「正しく怖れよ!」のもとに、地震の発生事由、発生した際のとるべき行動、発生後に起こりうる諸事態などについて、然るべく第一人者の手による視覚的に分かりやすい学習の機会を準備する必要を唱えてきた。
このたびの東日本大災害発生において、被害者となった子供たちが悪夢のような実体験を乗り越え、きらきらした笑顔を見せてくれていることにどんなに多くの人が救われているだろう。
そして3月30日に天皇・皇后両陛下が被災者の方々の臨時避難の場となっている東京武道館へお越しになり、床に膝をつき語りかけ、お尋ねになる仕草の温かさや美しさに涙がこぼれた。子供たちには、心が傷ついているひとに語りかける、励ますとはどのようなことなのか、どのような声音で、どのような心構えで人と対するのかも知って欲しい。大人たちにとっては今こそ子供たちに範を示す重要な機会であると思う。食事に始まって医療や介護、補給の支援など、既に現地で実践なされている方々は、子供たちがじっと見守って学んでいるのだということを知りつつ全力を尽くしておられるのだと思う。
<道(どう)>とは、何世紀にも亘って引き継がれる精神や型があり、真に力のある師や先達を敬い真似し自分を精進していくものである。多面に亘るため体得するには長い年月がかかるが先輩から学べるものである。防災においても常日ごろの心がけや訓練が必要であり、一度ことが起こればその対処法も迅速に取る必要がある。メリハリも必要だ。100のことができかねるのであれば、何を優先しことに当たるかを瞬時に選択決定していかなければならない。その判断力もつけなければならない。過去の歴史、現状、望まれる未来の絵姿を包括的に的確に捉え、咀嚼し、自分のものにしてほしい。そのためにわれわれ大人が防災道(ぼうさいどう)を切り開き、子供たちを導いていく必要がある。
このたびの辛い震災、未曾有の災害だからこそ、一連の流れを体験したわれわれが整理し、子供たちに伝え、次世代においてリーダーとなる礎作りの一助となっていきたい。
災害は細切れに捉えるものではないからこそ、地球の生業という過去の次元から現在までの映像として記録し、日本人の誇れる姿を子供たちに伝え、子供たちなりに防災のため守破離の精神をもって進化して欲しいと心から願うものである。