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「想定外だった」を作らない

平成23年5月1日
国際社長団体 日本事務局長
K&アソシエイツ(株)代表
加地 はるみ

 親と子供が日中は別々の行動をとる場合、その子供たちを災害からどのように守っていくべきか、現在小学校5年生の男児をもつ母の立場から考えたい。

 世田谷の区立小学校では、「東京直下の地震」を想定した避難訓練、また火災などを想定した防災訓練が定期的に行われている。子供たちは地震がおきた場合の合言葉「お・か・し・も・ち」(おさない・かけない・しゃべらない・もどらない・ちらばらない)を暗記しており、窓際の子供は窓が割れる可能性を想定しカーテンを閉め、落ち着いて廊下に並び、校庭に集合する。学校からは、世田谷区からの一斉メールで引き取り要請が親に配信される。あとは先生方が「責任をもって」親が引き取るまで子供と一緒にいてくれるという。

 3月11日の地震の際、息子は「地震カーで震度8を何度か体験しているから、そんなに怖くない」と落ち着いていた。子供たちを守るキーワードはやはり「想定→考え→予行演習」なのだと思う。大人があらゆるケースを想定し、子供と一緒に考え予行演習することで、子供たちは恐怖感を抑え責任を持った行動がとれる。

 東北のある小学校では大津波を想定し、「津波の可能性が出たら、一人一人まっしぐらに高台に走る」練習をしていたという。「そのような時は、点呼などしている余裕もないからバラバラに走れ。誰かが迷っていたら、とにかく手をつないでダッシュしろ。」と教えられ予行演習を重ねていたという。「隣の幼稚園の子供たちが怖がり迷っていたから、一人ずつ手を引いた。ほぼ全ての園児の手を引いて皆助かった」と聞いた。子供たちも偉かったが、これを教えた大人たちが立派だったと思う。

 アメリカ、ヨーロッパや中国の友人に、子供たちの学校での防災訓練などの有無や内容について聞いてみた。アメリカ南部では最近ハリケーン(竜巻)の被害が多く、それに対応して学校でも避難訓練を始めたそうである。歴史的に自然災害が絶えない日本では、はるかに備えが良いことがわかった。

<「想定外だった」を作らない >は今回の教訓である。

では、あらゆることを想定しているだろうか?

 先ずは学校。例えば引き取りに関し、先生方は「親が引き取るまで責任をもって子供と一緒にいる」という。では@丸一日たっても全く連絡できなかった場合、A両親ともに被災していて迎えに行けない場合を想定しているだろうか。B迎えの来ない子供が多い場合、三日分ぐらいの水や食糧はあるのだろうか、C寒い時期なら毛布の蓄えはあるのだろうか、D三日たっても連絡が取れない、引き取りに来ない親がいたら、学校は誰に連絡するべきなのか把握しているのだろうか。

 さらに家庭。保護者は、生活の様々な時間帯における大災害を想定し、あらゆるケースでの対応を子供たちと考え話合うことが必要である。残念ながら現代は核家族が増え時間的に余裕がない家庭環境のため、行政が学校経由で「宿題」という形で各家庭にこの話合いを促すのが適切であろう。すなわち、生活のあらゆる時間帯(スポーツをしている時、公園で遊んでいる時、塾に向かっている時など)での災害発生を想定し、家族でそれぞれのケースの対応策を話合うのを宿題とするのである。そして、
 →クラスで発表しあう(できれば親も出席)
 →対応策について、ケースごとに「これがベスト!」など討議
 →家族で実際に予行演習するのを宿題とする
を提案したい。

 どのようなクライシスに対しても、経験を積む(=場数を踏む)ことにより恐怖感を抑え正しい判断ができる。この機会に、大人も子供も一緒に「想定→考え→予行演習」を徹底的に行う必要がある。日本の未来を背負う子供たちを、学校ぐるみ、地域ぐるみで守っていきたいと強く強く願うものである。