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拙稿を書くにあたり、冒頭に災害にあわれた方々にお見舞い申し上げます。
今回の東日本大震災とこれに併発した福島原発事故のため、日本は未曾有の経済危機に直面する。
増税と16%とも言われる電気料金の値上げ、節電による企業稼動率の抑制など、今後明らかに著しいインフレが懸念されている。
更には、外交上、わが国は原子炉事故については気の毒な被災国ではなく、明らかに加害国であるとの責任を追及されることであろう。少なくとも被爆可能性のある日本の食材食品の輸入禁止措置を主張する国は原発対応が収束しても収まらないに違いない。今後、日本はどのように外交上のカードを手にし、経済復興に拍車を掛けるべきか、大きな課題となることであろう。
こうした中、原子力発電の開発を国力増強の礎にしようとしている新興国や戦略核兵器を所持している国家にとって、この福島原発事故のデータは非常に興味深いに違いない。
確かに、臨海爆発による放射線汚染と核種は異なるにしても、今回のような汚染状況に先進国家が全力を投入して、長期にわたり、打開策を講ずるケースは前例がなく、被爆後の国土、水域、生物、気象等に関する経時的変化に伴うデータはこの世に存在しないものであろう。
日本の経済復興には海外の輸出先の確保が必須である。こうした、外交戦略上も民間企業や大学、各関連組織に放射線汚染地域の研究を徹底的に行わせるべきであると考える。
菜の花や向日葵の様に、そこに生息する植物、海草、各種菌類などの放射線除去能力の調査や、土壌改善能の研究や実際に被爆地内に生息している動物に関する被爆状況と遺伝子損傷に関する研究など、更には鉱物、繊維等の放射線防護能など、知られていない研究内容が多く眠っているのではないだろうか。
福島県内で放たれた牛を屠殺している場合ではなく、むしろGPSと線量計を取り付け、血液や組織のデータを収集して行きたいところであろう。
こうした研究成果を時に国家機密とし、経済を礎とした外交カードを失った日本の新たな外交カードとして日本復興までを支えてくれるかもしれない。
つまりは、怪我をしたからといってひたすらにその怪我に嘆き隠し通そうとするのではなく徹底して調査をし、同じような怪我を恐れているものにも提供できる情報となれば、その怪我には意味があったことになる。
今日本は満身創痍である。しかしその中にあってもしぶとく生き残り、再び復興を目指すのであれば、調査、研究、対策、予防を常に心がけていくべきであろう。
今回の震災や原発事故で、世界の価値観が変わりつつある。
被災国日本がその変化をもっとも認識している。艦艇戦力に対する航空力の力を世界で最初に示していながら、原爆被爆により核の恐怖をもっとも認識していながら、それを生かしきれないわが国の歴史に変革をもたらす勇気が必要な時期にある。そのことを認識し、勇気ある覚悟が必要であると思われる。