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家族の安否確認
 〜 国境を越えて 〜

平成23年5月18日
プロフェッショナル・デベロップメント・スペシャリスト
カヴァナーうらら

 3月11日午後2時46分地震発生。青山のオフィス7階で、私は建物のきしむ音に震え、向かいのガラス張りビルが大きく左右に揺れるのを見た時、尋常ではない事態であることに気付いた。まだ揺れ続ける中で夫に携帯電話をかけたが通じず、固定電話でようやく話すことができた。

 我が家は、夫、カナダの大学に通う息子、高校生の娘と私の4人家族である。娘については、『学校にいるから安全だろう』と何の根拠もなく思っていたが、まさに建て替えに着手し始めたばかりの校舎は、決して安全とは言い切れない。『怪我などなければよいが』と心配になった時には、携帯電話はすでに回線パンク状態。数分後には、娘とも夫とも連絡が取れなくなっていた。

 『そうだ、Facebook!』。我が家では全員が、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、Facebookのアカウントを持っている。子供たちは友達と、夫と私は海外の親戚たちとのコミュニケーションを主たる目的として、数年前から使い始めていた。Facebookは、「いま何をしている」、「どこにいる」などと随時書き込め、限定した仲間だけに公開される。私は娘が現況を書き込んでいることに期待して、早速開いてみた。

 そして目に留まったのは、カナダにいる息子の書き込みだった。
「ジュジュ(娘の愛称)は大丈夫。父が自転車でばばんちに寄ってから、学校に迎えにいく」

 これを見た私は、家族間で既に安否確認が取れていることがわかり、まずは安心することができた。それにしても、昼夜が逆転するほど離れた地の息子を通して、数キロしか離れていない娘の安否確認をすることになろうとは。

 後で聞いたのだが、息子は地震発生を日本にいる友人のFacebookへのメッセージで知り、すぐに「大丈夫?」と書き込んだ。そして電話不通の状況下で困惑していた娘が、そのメッセージに気付き、スマートフォンで、Skype(インターネット通話)を使って兄へ電話したのだという。すでに夫と連絡を取っていた息子は、娘に「ダディが迎えに行く」と伝え安心させ、連絡がとれない私への報告として、状況をFacebookに書いたのだそうだ。ちなみにSkypeは、送信者と受信者がSkypeを介して通話する場合、地球の裏側であろうとも無料である。

 子供に携帯電話を持たせる事の是非や、学校に持ち込む事への規制など、世間では色々論じられているが、こうした緊急事態を経験すると、携帯電話を持たせない事へのリスクの方が気になる。悪いのは携帯電話そのものではなく、しかるべき使い方や功罪を教育できない親と教師の問題ではなかろうか。

 携帯電話で思い出す、もう一つのエピソードがある。
  夜中に電話が鳴った。こんな時間の電話は緊急事態に違いない、と嫌な予感で受話器を取った。そして電話の向こうに聞こえたのは、動揺した息子の「大変な事になった……」という言葉だった。一瞬こっちが動転しそうになったが、なんと言う事はない、「iPhone(スマートフォン)を無くした。雪の中でどこにあるかわからない」とのこと。
 幸い、寒中夜通し友達と捜し回っても見つからなかったスマートフォンは、「GPS(追跡システム)で探せ」という夫の指示により、間もなく発見された。

 このときに思ったのは、見つからなかったのが携帯電話ではなく、子供自身だったらどうだったろう、ということだ。特に小さな子供が、迷子や誘拐にあったとしても、GPS付きの携帯電話を持っていたら、追跡により発見できる確率は、はるかに高いに違いない。

 SNS、インターネット、携帯電話は、使い方次第で強力な子供を守るツールとなる。「近頃の子供達は」という前に、私たち親がまず理解し、子供達に正しく指導できる立場となって、有効に活用していきたい。