クライシスマネジメント協議会の長田逸平専務理事に、設立の趣旨や事業展開などについて話を聞いた(編集委員・工藤真一)。
ー設立の趣旨は。
長田逸平専務理事 |
「近年、大規模な地震や新型インフレンザの世界的な流行などといった災害の発生が相次いでいる。地震については首都直下地震などの危険性も高まっていると思う。
そうした中、わが国の防災・危機管理への備えは未だ万全とは言い難い状況にあるのではないか。防災産業の育成も不十分であり、その需要と供給双方の社会的な負担のあり方なども十分検討されていない。いざ災害が発生すれば社会的、経済的な被害やその影響は甚大である。企業がどのようなダメージを受けるかということも想定した上で、実践的かつ効果的な対応策を講じておくことが、今や関係者にとって緊急の責務である。
災害に備えた官民における防災・危機管理の機能強化などは避けて通れない社会的課題であり、防災意識の啓発や知識の普及とともに、万全な態勢の確立が必要である。国や地方自治体では防災・危機管理に関するマニュアルの整備や訓練が行われているが、企業・団体においても地域社会との連携を踏まえ、効果的な態勢づくりが必要不可欠だ。
そこで、昨年7月に日本生産性本部の中に立ち上げたクライシスマネジメント研究会を母体に、それとは独立した形で、この協議会を立ち上げた。中央官庁、地方自治体、地域社会および産業界との連携を視野に、特に産業界の対応を中心とした意識啓発や、対応マニュアルの作成により、実践的な危機管理態勢の構築を図っていきたい。また、防災・危機管理に関する産業の育成や市場の形成などを促していきたい。さらに、防災・危機管理に関するマンパワーの確保も極めて重要であり、組織的訓練を受けて優れた対応能力をお持ちの元消防や警察、自衛官などの力を組織化し、対処する制度を構築することも検討していきたい。
BCP(事業継続計画)を策定する企業も増えているが、そうした各企業ごとの防災・危機管理だけで災害に本当に打ち勝つことができるのか、非常に難しいのではないか。リスクマネジメントやクライシスマネジメントを行う団体は他にもいろいろあるが、この協議会は、災害時に本当に必要とされる官民などの社会的連携を構築し、家族や社員、そして自らを危機から守ることを目指している点で大きく異なる。そうした志と問題意識を持った各方面の方々に一人でも多く参画して頂き、『災害に強い国づくり』、『安心・安全な社会』の実現に向けて取り組んでいきたいと考えている。
普通、こうした一つの会を立ち上げると、大抵の場合、それに入会するとどんなメリットや恩恵を受けられるのかといった期待を持たれるが、我々としては、それぞれ問題意識を持った様々な主体にこの協議会という場を活用して頂き、安全・安心のまちづくりや企業の態勢づくりに向けて取り組んで頂ければと思う。個別具体のプロジェクトもそうした中で形成されていくだろし、今後、会員を募り走りながら考えていきたい」
ー事業展開については。
「協議会の構成員には、国や地方自治体をはじめ、防災機器、ライフライン、物流・運送、建設、報道・通信、金融・保険、警備、医療・医薬品、社会福祉、食品、教育、労働、産業廃棄物処理など広範な分野の事業をを想定している。つまり、関係するあらゆる業種の企業・団体に参画して頂き、協議会で委員会を組織し、その中で企業・団体同士、あるいは消防や警察さらには自衛隊などとの連携を図っていくことが事業になると考えている。
事業概要としては、まず防災関連のビジネスの育成や市場の形成、防災産業による地域経済の活性化をはじめ、企業関連では災害の事例分析、防災・危機管理の実態調査やマニュアルの策定、広域連携を指向した民間の災害・危機対応システムの構築、実践的な防災訓練、社会への影響評価と対応指針モデルの策定などを考えている。また、普及・啓発に向け情報誌の発行や講演会、セミナーなどの実施、優良事例の顕彰、さらに防災責任者などの研修会の実施、元消防・警察・自衛官の活用と組織化を図りたい。そのほか、国や地方自治体などと連携し、地域防災計画とのすり合わせなどを検討したい」
大規模な地震や新型インフルエンザの大流行など災害の発生に備え、万全の体制整備が求められている (写真はイメージ) |