平成22年9月28日、クライシスマネジメント協議会が発足し、同日、東京都千代田区の日本工業倶楽部にて設立総会が行われました(設立総会のトピックスはこちら)。設立総会での役員各位による挨拶を以下に記載します。
石原会長 |
今回、協議会の会長の責務をお受けした石原でございます。この協議会の設立の趣旨につきましては先ほど長田さんのほうから、縷々お話がございました。
私はこの間、阪神・淡路大震災がおこった当時、村山内閣で官房副長官をやらせていただきました。あの災害への対応を担当いたしました。その際の経験からしますと、大規模な災害が発生した場合には、行政機関だけでは決して十分な対応はできない。地域の住民の皆さんや企業の皆さん、それに行政、この三者が、一体となって行わなければ実効が上がらないということを痛感いたしました。
最もこの行政の対処につきましても、それぞれ関係する場において、そのときの現状を踏まえて、制度の態勢や態勢の整備を行ってまいりました。
私自身はあの当時の経験から、一般の市民の皆さんが防災に対して、しっかりと知識を持ち、またある程度の訓練を積み重ねることが大切だと考えましたので、任意団体として災害救援ボランティア推進委員会というものを立ち上げました。
これは主婦の方や学生の皆さん、ボランティアを志す方々に対して、一定の知識と訓練を施し、災害が起こった場合に地域レベルで対処する。こういうねらいを持ってスタートしたわけで、今日まで続けてきております。おかげさまで、そのボランティア研修を終えた者がかなりの数になってきております。
一方、各界の皆さんの問題解決、そういう指導にあたっておられる方に、防災に対する知識を持ってもらいたいというので、防災士という制度もスタートさせました。今は私のあと官房副長官をしておりました古川君がしております。
私は、企業も防災に対する対策をしっかり行うということが非常に大切であると、かねがね考えていたわけです。大企業は大企業なりに、また中小企業もそれなりに、それぞれ防災態勢の整備、防災に対する教育や訓練をやってもらいたいと思っておりました。
そういう問題については日本生産性本部でもお考えいただいていたようで今回の協議会の設立にいたったわけであります。しかし企業の状況を見ますと、やはりそれぞれがあるべく実態は、企業が防災態勢を自主的にやろうということは、非常に大変であると。そういう状況の中で、長田さんたちが、この企業における防災態勢の整備、協議会設立を起草されたわけです。その話を承りまして、私も防災の態勢整備にあたることに賛成でありますので、そのアイデアは遅きに失した感はあるけれども、とにかくスタートするということは大変であろうと強く思い、そういうことでサインをしたわけです。
サインをしましたら、会長をやってくれという話になりまして、また私自身の経験からしますと、今回の協議会はあくまで企業における防災態勢の整備というものを促進するための協議会ということでありますから、本来であれば会長さんは経団連の会長さんとか、副会長方とか、経済界の方がふさわしいであろうと思うのですけれども、私はある意味で防災の重要情報は内閣府の中にありますから、官民のクロスしたところの組織にあればより機能しましょうということで会長を引き受けさせていただきました。
防災その他、ボランティア活動もそうですが、こういった活動というのは、途中からそれに参加する人たちがたくさん増えてくる。しかし要はその中心になる組織に、どれだけの熱意を持ってやられるかということが大切だと思います。その点、これからはじめる関係者の皆さん、大変ご苦労が多いと思いますけれども、熱意を持って、これからしっかりやっていただきたい。そして何よりも、この協議会の発足に対して、多くの企業からぜひご協力いただければと思います。
いつも言うということでありますけれども、「災害は忘れたころにやってくる」と言われていますように、阪神・淡路大震災からすでに15年以上経過いたしまして、そろそろ震災の記憶がだんだん薄れてきているということも、相当に危機的状況にある。
今まさに防災態勢を整えるということが大切ではないかと思います。そういうわけで、民間主導の協議会を発足いたしますので、どうぞ皆さん方の積極的なご協力をお願いして、挨拶とさせていただきたいと思います。
林副会長 |
協議会の副会長の指名を受けました林でございます。よろしくお願いいたします。実は6月頃だったと思うのですが、石原会長から電話がありまして、今度、日本生産性本部によって、こういう協議会を発足させる。そういうお話を伺いました。
実は私は2004年に消防庁長官に就任させていただいたわけでありますけれども、長官在任中には皆さんご承知のように台風とか地震、あるいは新潟ならびに豊岡の水害があり、10月には新潟の地震。年末にはインド洋の津波。こういうようなときに長官をやらせていただいたわけです。
そのとき痛感しておりましたのは政府機関の防災に関する知識、あらゆる態勢の強化が必要かなと思いましたけれども、企業の方々の参画も、もう少し考えていただけないかなという思いが強くございました。
当時、経団連会長でありました奥田さんにそのお話をしましたら、奥田さんは日本経団連の理事会で話して下さいと言われまして、「企業も災害のときには大変ですよ。社会的な責任を問われますよと。」少しお時間をいただきながら、災害対応を社会的責任という意味で、企業も参画していただきたいということを申し上げた記憶があります。
官民一緒になって、災害が起こるのは仕方がないことですから、被害を最小限に抑える。官・民・企業、三連関の連携で微力ではありますけれども、これまでの経験を生かして、この趣旨に沿うように一生懸命、努力したいと思っております。
佐藤副会長 |
今は警察を退官し、林さんに紹介をされた民間のうちの1人でございます。
この協議会を実施しようということは、大変難しい事業でして、防災知識、クライシスマネジメントに関しては横断的です。それに果敢に取り組もうというご趣旨ですので、それについては私も経験もありますけれども、民間主導ということをお願いしたい。
それとまたいま一つはそういう判断に、官・民それぞれと公共事業との連携を図って、問題提起をしようということでありますから、これは至難だなと思いますけれども、当面これは走りながら考えるということしか、何か手はないだろうと思っております。
発起人の会合で、副会長をお引き受けした次第であります。官といいましても特に消防、警察そして自衛隊。この連携は災害クライシスにかかわらず、日常的にも必要なことだろうと思います。
よろしくお願いします。
先崎副会長 |
ご紹介いただきました先崎と申します。の危機管理体制が問われている、こういう時期に、このような組織が立ち上がるということは大変いいことだと思います。約40年間、陸上自衛官として勤務してまいりまして、4年ほど前に退官いたしました。
私も防災組織ということを中心とした機関に取り組みたいと考えております。
クライシスマネジメント、防災危機管理の組織は非常に幅広いものであるということはもうわかるわけなのですが、どうやってこれをうまく結びつけるかということというのが、非常に大事なことだと思うわけであります。
そういった中で、お互いにいろいろな、それぞれの立場で経験したことをうまく活用しながら、何か新しい、少しでも役に立てるような、こういうふうな企業を中心とした組織ネットワークづくり。そういうところに貢献できればいいなと思っております。
私はかねてから、組織の現場を重視しておりましたので、特にこういうふうな危機管理にあたりまして、組織ということで聞いたこと、危機管理の中で一番大事なことは、私はある危機に対して、どういうポリシーを持つか。そのポリシーの問題と初動対処、この二つが極めて大事だということは政府時代にずっと現場レベルでやってきたつもりです。
現場レベルの危機管理がうまくスムーズにいくために、地方のほうでいい、しっかりとした連携をとってといいますか、組織をつくるということは非常に大事だなという感じがいたします。
少しでも役に立てればいいなと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
前田副会長 |
私は現在、東大で副学長をしております。以前は生産技術研究所におりました。実は、大学の建物ほど危険なものはないのであります。構造としては安全であるが。そこに何があるかといえば、大きな声では言えないですけれども研究用の細菌があります。なかなかオープンにはできないと思っております。
この辺りも含めて、私どもも少しでもお役に立てばと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
笹森副会長 |
石原会長以下、副会長、をはじめまして、趣旨、目的、そして事業について賛成だろうと思いますが、実際に運営するとなると大変だというご意見がありました。
今お話しになった方のお立場をお聞きすると、国家レベル、行政レベルで、それぞれの専門分野の責任者の方がほとんど入っていますから、行政的には問題ない。しかしそれを民がやっていくことになったときに、大手企業ではないかと思います。地域に展開をしているような、さらには地場に浸透している公益企業。そこを最適にやらないといけない。
私の経験から言えば、現場をずっとやってきましたので、そういう話は今から15年前になります。あのときから日本はボランティア頼りですね。私も当時、連合にいるときにあの現場に入りました。地震が発生して3日後、約4カ月間現地にいました。平均1日、300人のボランティアが来て、地域のいろいろなところに出向きました。
東海大地震や関東大地震、その大きな被害が起こったときにどうしようかという相談をずっと進めてきました。サラリーマンの人が災害が起きたときに、どうやったら家に帰れるかということで、災害帰宅訓練をこの4年間ぐらいずっと見直している。
日比谷公園から東京湾岸、それから神奈川、千葉、埼玉。約25キロぐらい歩いて帰る訓練を強制的にお願いしました。そうしたらやっと300の市町村が協力をしてくれたのが2年ぐらい前です。
それ以後、一番協力してくれたのはコンビニ。飲み物ですけれども、ものすごくおいしい。企業では何かやっていないのかというと、それぞれの商品から提供している。そしてそれぞれ個別の企業が対応している。
それから行政は、みんな縦串なのです。横のつながりがないと災害時の対応はできっこない。どこかがやらないかなと思っていたら、この協議会の話があった。
しかし具体的にこれから発足した時に、運営の問題もあると思いますが、今のままでは具体的な展開がなかなかできないだろうということがあります。だから今日ご賛同いただいた方も、大変それぞれ影響力をお持ちになった方ばかりですので、こういった横串を通す。災害時に実際に被災した人たちにどう対処するか。極めて重要な点を宣言していただき、協議会にも参加していただければ石原会長の下で、思った以上の危機管理ができるのではないかと思っております。よろしくお願いします。
小嶋顧問 |
私は大学の専門は建築であります。昔はデザインをやっていましたが、その後はずっと都市計画をやっておりました。また、日本大学の総長、理事長も務めました。
今一番、私が心配しておりますのは、高学歴の方たちが増えてまいりました。しかし、団体行動とか、そういう訓練はほとんどなされてきませんでした。自分の考えだけで行動するという弱体化した社会になりつつある。これはいろいろな意味で危険な社会であり、そのような考え方が、20歳代、30歳代に予想もしない勢いで拡大している。
いかに社会の中で力を合わせることができるかが大事であり、それをこの協議会の活動で育成したく、その意味で、私も、少しでもお役に立ちたいと思っております。よろしくお願いします。
長谷川顧問 |
ただいまご紹介にあずかりました、長谷川でございます。私は国鉄に30年ばかりおりまして、最後は国鉄の解散と同時に職員担当、民営化推進事業担当をやっていました。JRに移ってからは最後、JR東日本の監査役など務めました。
言うまでもなく鉄道というのは国民、利用者のために安全、安心の輸送を遂行するというのが第一の責務でございます。これからもそのために、今は交通協会というところで副会長をやっておりますけれども、そういう面での貢献をしてまいりたいと思っています。
そういう中で、例えばJR東日本では危機管理室という組織を設けまして、対応をいろいろなシミュレーションをしながら考えておりますけれども、さっき、笹森さんが言っておりましたけれども、どうしても1企業で考えることは縦割りの、本当に限られた、独りよがりの発想しかないわけでありまして、笹森さんがおっしゃるように、横串を通した仕組みというのがクライシスマネジメントでも一番大事だと、私もまったくそのとおりだと思います。
そういう理解をしながら、石原会長のおっしゃることに全面的に賛同いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
阿部顧問 |
阿部でございます。現在、川崎市長をやっておりますけれども、危機管理は大変大事なことでございますので、協議会に顧問として参加させていただくことになりました。いろいろなことをしたいと思っているのでございます。
ご承知のとおり、川崎市は政令指定都市でございまして、1年間に約5兆円の予算規模であります。地元もいまどき珍しく人口が増えおり、142万人になりました。
川崎には、日本を支えるような企業の工場がたくさんございまして、そういう意味でも危機管理は非常に大事になっているわけでございます。
羽田空港が10月11日に国際化するわけでありますけれども、羽田空港が国際化することによって、感染症がここから広がるというのも考えられるし、あるいはテロなども考えられますので、危機管理には、私どもも大変力を入れているわけでございます。
この協議会に、私どももご協力したいと思いますけれども、皆様方も川崎についても、ご協力いただきたいと思います。どうもありがとうございました。
望月顧問 |
私どもは、物流業者であり、全国に1万2000人ほどの倉庫を持っております。阪神・淡路のときにすぐ現地に入りまして、建物の診断の責任者として、安全診断をしました。
そのような知識がクライシスメネジメント協議会の活動の中で、役に立てばと思いますので、よろしくお願いします。
大野顧問 |
大野と申します。よろしくお願いします。私は土木の立場でということで、そうすると「土木ってどういう領域ですか」ということに、何か幅の狭そうな話が出てきますけれども、インフラストラクチャーの安全ということです。
実は土木学会で地震災害マネジメントというセミナーを私は10年担当しておりまして、その委員長をしております。災害にかかわる事前、直後、そして恒久的な復旧、いろいろな立場がありますけれども、いま基本的に安全、安心な世の中をつくるということでは、具体的に人一人の命を救うということに着目しまして、お手元に少しマンホールのパンフレット、あるいはトンネル内の避難誘導の機能を持ったものを具体的に開発して、それを災害時、特に、直後に機能させようと、横浜市と2年目になりますけれども、共同研究をさせていただいています。
安全、安心、これは非常に重要なことで、それを実践していく流れの中で、このクライシスマネジメントと一緒に、いろいろ情報交換あるいは新たなるものをつくっていきたいと思っております。
皆さま方と一緒にやっていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。