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この度の災害に遭われた皆様に心からお見舞い申し上げます。
子供たちが安全に安心して育ち次世代を健やかに担うことは、全ての人たちの願いであると思う。そのため、企業では事業所内保育所を創設し、子育てをしながら働く女性(男性も)たちを支援している。震災が発生した場合の保育所に預けられている子供たちへの対応は、久しく筆者の課題であった。このたび東京都大田区にある企業内保育園である「プチとまと」(施設長本多昭子氏)を訪問し、3月11日に起こったこと、そして日ごろ心がけてこられたことを土山副施設長に伺った。
当日の震度5の地震発生時、預かり児童は11名(0〜2歳児)、職員は6名であった。
避難経路の確認、火の元確認と同時に、保育園内でもより堅牢と思われるスペースに子供たちを集める。子供たちに動揺は見られなかったとのこと。今回は損壊や火災発生なきため、保育園内に留まることとなった。
その中で最も重要に思われるのは子供たちの落ち着いた動向である。それには、日頃の職員の方々の努力の成果があった。発生直後、電話や携帯メールも不通であったため、子供たちは職員の傘下に委ねられている。
@ | 職員の方々は、日頃より防災の社外研修に出席し正しく直近の情報を学習してきたこと。 | ||||||
A | その内容を全職員にフィードバックしていること。 | ||||||
B | 避難訓練の年間計画をたて、地震+火災、戸外遊び中地震、午睡中地震など多様な想定に従った月例の避難訓練を確実に実施し、反省会も開き、絶えず改善と定着を実践してきたこと。 | ||||||
C | 従って、子供たちもこの訓練に慣れており、今次地震発生においても、日頃自分たちの世話をしてくれる保育士の方々が周りにおり冷静であるので動揺は見られなかったと思われること。 | ||||||
D | 同時に、避難所は保育園から数百メーターの小学校であるが、迅速な避難のために、職員のアイデアを活かした準備がなされていること。一例としては、子供たちの靴は、牛乳パックを利用して作った'取っ手のついたポータブルな整理箱'に一足ずつ揃えて全員分入れておき、一度に運べるようにしてある(写真参照)。全員の上着と帽子も一つの避難持ち出し用バスケットに入れておく。紙おむつも全員分、負ぶい紐も職員数分は確保し一つの袋に準備しておく。 | ||||||
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すなわち、職員間はもとより、子供と職員の間に信頼関係が十分に構築されていることが見られたのである。
同園は、今後一層毎月の訓練を真剣に行い、負ぶい紐の扱いや子供の衣服着脱の迅速化など更なる鍛錬を志している。また「震災時の保育園の対応」報告書を作成しており保護者にも配布するとのことであった。
この訪問で得た印象は、職員が災害において子供を確実に守るという共通の強い目的を持ち、職員同士のコミュニケーションを良くし、課題発見と解決への試みを常に行うことにより確実なPDCAが実践され成果に至っているということであった。
取り組み好事例としてご案内する次第である。